ドルドーニュ川右岸は粘土質で湿気が多い土壌であり、ガロンヌ川、ジロンド川左岸は砂利質で水はけがよい。同じ場所でも土壌の違いがあり、その違いが育てやすいブドウ品種やワインの味に影響している。

 メドック・マラソンでは、このジロンド川の左岸をひたすら走るのだけど、確かに砂利道でいかにも水はけがよさそうなのを肌で(足で)感じることができた。砂利道はワイン造りには最適なのかもしれないけれど、マラソンロードとしてはかなり厄介で、足を取られてとても走りにくかった。

 クリマ(climat)という言葉もある。

 クリマはやはりフランス語で「気象(英語ならclimate、 クライメット)」を意味する言葉だ。ワインの世界では「風土」といった意味だ。とくにブルゴーニュ地方ではワイン用のブドウを作る各畑のことも「クリマ」という。ブルゴーニュでは畑のことを「クロ(clos)」とも言うが、これは石垣の意味で、石垣で囲まれたワイナリーを指している(石垣がなくてもクロと呼ぶ場合もあるそうだが)。

■白ワインと赤ワインのブドウは見た目が違う、人間と同じだ

 ワイン用のブドウはたくさんあるが、その大部分はVitis viniferaと呼ばれるヨーロッパ系のブドウが使われている。これが生物学でいうところの「種」に当たる。同じV.viniferaでも、ワイン用のブドウは(ざっくり言えば)白ワイン用のブドウと赤ワイン用のブドウがあって、見た目が違う。人間(Homo sapiens)にいろいろな肌の人がいるように、ブドウにもいろいろある、というわけだ。

 白ワイン用のブドウは皮が緑色の、見た目はマスカットのような感じのブドウだ(実際にマスカットで造る白ワインもある)。赤ワイン用のブドウは皮が紫っぽいブドウ、まあ見た目、巨峰のようなブドウだ。

 その、白ワイン用のブドウも細かく分類できる。

 有名なところではシャルドネ(Chardonnay)とか、ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)。聞いたことがあるという読者も多いだろう。赤ワイン用のブドウにはカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)とか、メルロ(Merlot)、ピノ・ノワール(Pino Noir)とかが有名だ。

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