「親の預貯金と不動産に関しては、自分で調べる方法もあります。親の通帳が見つかれば、その通帳の口座がある支店に預貯金残高証明書か取引履歴を発行してもらうのです」

 この手続きは他の相続人の同意がなくても、単独で行うことができる。

「取引履歴のほうが入出金の記録までわかるので、おすすめです。預貯金残高証明書や取引履歴をとるには親が死亡していることを証明する戸籍謄本(除籍謄本)、またこちらが相続人であることを証明する戸籍謄本、印鑑証明書等が必要です。通帳が見つからないときは、キャッシュカードや金融機関のカレンダーなどを探してみることです」

 不動産に関しては権利証(登記済証)、もしくは固定資産税納税通知書。それもない場合は親の不動産のある市区町村役場に行き、固定資産課税台帳をチェックする。そしてその台帳に基づいて所有者ごとに不動産が一覧になっている「名寄(なよせ)帳」を調べるのだ。そしてもし、親の死亡前後などに大きな金額が引き出されていたりするのであれば、上のような書面を内容証明郵便で相手に送ることだ。

 内容証明郵便は、誰が誰あてにいつ、どんな内容の郵便を出したか郵便局が公的に証明してくれる郵便。

「ゆえに、こちらの本気度を相手に示すことができるわけです」

 内容証明郵便にはさすがに驚く人も多い。そこできょうだいのほうが折れて、情報を開示してくることもある。だがそこまでやっても教えてもらえない場合は、

「家庭裁判所での調停で明らかにすることですね。相続の争いの場合はいきなり裁判をするわけではありません。まずは話し合いです」

 ケース・バイ・ケースだが、きょうだい間でモメごとをズルズル引きずっても解決の糸口はなかなか見えてこないものだ。

「このような場合は“冷静なほう”が淡々とものごとを進めて、事態を収束させていくことが大切なのです」

 一人っ子ではなくきょうだいがいる家に生まれたのなら、やはりきょうだい間でもつかず離れず最低限のコミュニケーションは取り続けることが、モメごとを遠ざけるのだ。親に対して、子に対して、きょうだいに対して。結局、相続では、家族同士の小さな心遣いの有無が問われているのかもしれない。(赤根千鶴子)

週刊朝日  2019年1月4‐11日合併号より抜粋