「ニセ医学」を信じてしまった患者を救えない、“正論”医療の現実 (3/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「ニセ医学」を信じてしまった患者を救えない、“正論”医療の現実

連載「現役皮膚科医がつづる “患者さんと一緒に考えたいこと、伝えたいこと”」

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大塚篤司週刊朝日#ヘルス
大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

ゆっくり時間をかけて「こっちの治療のほうがいいんじゃない?」と提案できる医師でありたい(写真:getty images)

ゆっくり時間をかけて「こっちの治療のほうがいいんじゃない?」と提案できる医師でありたい(写真:getty images)

 ミルは『自由論』の中で愚行権に続いて、間違った行為をして困っているからといって、その人をもっと苦しめようなんて思ってはいけない、と説明しています。

「その人は、自分のあやまちの罰をすでに十分うけている(中略)本人の行為が本人にもたらしかねない災いをいかに避け、いかに解消するかを教えてあげて、その罰を軽くしてあげるよう努力したい」

 病気で苦しむ患者さんは、当然、私たち医者に病気を治してほしいと思って受診しています。ただ、残念なことに現代の医学では治せない病気、慢性の経過をとる病気も多く存在します。病気が治らないことに対するいらだち、不安。

 さらに、医者の対応に傷つき医療不信になった患者さんが一定数います。ニセ医学に走ってしまった原因が、私たち医者の心ない態度だったという話も聞きます。

 若い頃に私は、トンデモ医療に走ってしまう患者さんの気持ちも考えず、正論を振りかざしていました。

 私が医者ではなく、もし不治の病にかかったら、良い治療が世界中で存在しないか探し回ると思います。それでも見つからなかったら、そしたら、とても残念だけれども、最後は私の心もみてくれる優しい先生を探します。

 私の話を聞いてくれて、受け入れてくれて、そして正しい治療をおこなってくれる先生にお願いします。

 決して、正しい治療をおこなってくれるだけの先生は選ばないと思います。

 トンデモ医療・ニセ医学の間違いを否定し、正しい情報を普及することは必要です。正しい知識を先に得ることで、間違った情報をうのみにしてしまう危険性は減ります。

 ただ、同じ方法ではニセ医学を信じてしまった患者さんを救えない。

 正論を振りかざしてニセ医学を切る。その切った刀の先には、ニセ医学を信じて苦しんでいる患者さんがいます。もしかしたら、ニセ医学を選んだ理由は、僕ら医者の態度にあったのかもしれない。

 私は、今まさにニセ医学に苦しんでいる患者さんには「とりあえず話を聞きましょう」と伝えたいと思っています。

 ゆっくり時間をかけて、

「こっちの治療のほうがいいんじゃない?」

 そう提案できるお医者さんでありたいと思っています。

◯大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医。がん薬物治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、作家として医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman


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大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医。がん薬物治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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