「今年、30代の女性が家庭用のトイレの消臭スプレーを捨てようとして、台所でガス抜きをしていたところ、火花が散って発火し、指からひじにかけてやけどを負ったという事例が報告されています」

 フロンガスが規制されてから、家庭用のスプレーにも、噴射剤として、前出の液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル (DME)などが使われている。

「今回、閉めきった室内でガス抜きしたというのは問題ですね。120本も部屋の中で噴射させたことで、爆発するのに十分な濃度になっていたかもしれません」(国民生活センターの担当者・坂東氏)

 事故の全貌は徐々に明らかになってきた。

 消臭スプレーは、入居前に部屋の消臭に使用していたというが、なぜ、そんなに大量のスプレーが店内にあったのかということが問題化。お客さんに売りつけるだけ売りつけて、実際にはスプレーを使っていなかったという疑惑も浮上した。

 アパマン店舗を運営する不動産仲介会社「アパマンショップリーシング北海道」(同市北区)の佐藤大生社長は「未施工があったと聞いている」と一部であれ認めた。スプレーは1本1万から2万円(施工料込み)で販売、原価は約1千円だという。

 ある不動産業者社長は、業界で行なわれているずさんな「消臭・除菌」の実態を、こう語った。

「新しく入居するお客さんには、敷金、礼金、仲介料の話をしたあとに、『オプションでカギの交換と部屋の消臭をつけられますがいかがですか?』と聞いています。女性のお客さんは比較的、『じゃあ、消臭をオプションでつけてください』と言われる方が多い」

 不動産業者としても、1日に何件もある部屋の下見や契約書の作成をしていると、忙しくて手が回らなくなる。

「いちいち、部屋まで行って、消臭までやっていられないから、玄関や台所などに『除菌済み』という紙だけ貼って、やったことにしてしまっているケースがあります。アパマンさんだけでなく、他の大手仲介業者もやってますよ。部屋の清掃は見てすぐわかりますが、消臭・除菌は、見た目ではわかりませんからね」

 事故を起こしたアパマン男性店長(33)については、店長個人の過失があったとして、北海道警は重過失傷害と重過失火の疑いで捜査を進めているというが、不動産業界にもメスを入れることが必要なようだ。(本誌・上田耕司)

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