「健やかなる時も病める時も」はミディアム・テンポのメロー・チューンでネオ・ソウル的なテイストによる。浜野が語るには“支え合っていこうねっていう優しい曲のつもりで作っていたけど、演奏は「苦しい!」っていう感覚が出ていて、それがリアルでいいなと思っていて”とのこと。ベースの村上の演奏が光っている。

「飽和」は、ミラー・ボールがきらめくダンサブルなディスコ・サウンドを狙ったそうだが、野趣あふれる展開に。おまけに男女デュオではなく、思い出野郎Aチームのダミ声の高橋マコイチをゲストに迎え、オッサン度の高いむさくるしい展開だ。

「或いは」もメロー・チューンでネオ・ソウル的テイスト。恋人との自由な恋愛関係を歌う。自問するような丹念な歌いぶりが説得力をもたらしている。

「なみ」はシティ・ポップス風。ゲスト参加のサイトウ“JxJx”ジュンが浜野、仰木、村上と共作し、エレピも演奏。ソウル・ジャズ風なセンスも採り入れたアダルトな趣で、これまでの彼らにはなかった曲。寄せては返す“なみ(波)”に2人の“いとなみ(営み)”を重ねた歌詞がニクい。

「ふるさと」では、浜野がインストをバックに死期の近づいた老人を演じるスキットを披露。「ハートレス」はパワフルなファンク・ナンバー。“愛”への不安を率直に表現した浜野の歌、成熟度を増した演奏の重厚さが光る。

 表題曲「再会」は、アヴェレイジ・ホワイト・バンド風のポップ・ソウル的な演奏展開で、“再会”の喜び、楽しさよりもその後の別れと哀愁を強調。ラストの「泊まっていきなよ」でも別れのさみしさ、切なさを巧みに表現。大人のくせに子どものようなダダこね感を醸すあたりに、浜野の歌の巧みさを感じる。

 本作『再会』は、ジェームス・ブラウンに傾倒し、ゴリ押しのファンク・スタイルを実践してきた彼らが、直訳や真似の域を脱した独自性のある曲、技術を増した演奏とサウンド展開、アダルトな表現やその味わいなど、バンドとしての成熟を物語る力作、意欲作だ。(音楽評論家・小倉エージ)

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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