日本にありながらファンクの神髄を追究するバンド「在日ファンク」の7人
日本にありながらファンクの神髄を追究するバンド「在日ファンク」の7人
在日ファンク5枚目のアルバム『再会』(カクバリズム DDCK―1058)
在日ファンク5枚目のアルバム『再会』(カクバリズム DDCK―1058)

 主題歌が流れるたびに「ヤボったくて、あか抜けしない歌だ」とブツクサ言ってしまう。NHK朝ドラ『まんぷく』。それでも私、結構見ちゃってる。

【在日ファンク2年半ぶりのアルバム『再会』ジャケットはこちら】

 
 主演の安藤サクラ、松坂慶子、松下奈緒といった女優陣、要潤、桐谷健太、大谷亮平らに若き塩軍団を加えた男優たちはそれぞれ個性的だ。

 浜野謙太には大いに笑った。白馬の蘭丸にまたがる歯医者の牧善之介役という異色のキャラクターに扮している。「とと姉ちゃん」以来の朝ドラ出演で、他にも映画、テレビへの出演は多く、お茶の間には知られた存在だ。

 そんなハマケンこと浜野謙太率いるファンク・バンドの在日ファンクが2年半ぶりに5作目のアルバム『再会』を発表した。

 浜野は、星野源をリーダーとするインストゥルメンタル・バンドのSAKEROCKの一員でトロンボーンを担当していた。在日ファンクを結成したのは2007年。浜野のほか、村上啓太(B)、仰木亮彦(G)、永田真毅(Dr)、福島“ピート”幹夫(Sax)、ジェントル久保田(Tb)、村上基(Tp)の6人。サックスは現在、浜野が別途活動中のジャズ・トリオ、NEWDAYの一員である橋本剛秀が担当している。

 浜野はSAKEROCK参加以前から、高校時代の音楽仲間である村上啓太とブルース・ブラザースに触発され、ブルースやソウルに傾倒。とりわけ“ゲロッパ”のジェームス・ブラウンのとりことなり、その流れをくむファンク・バンドの結成を思い立った。

“在日”というネーミングにはドキッとさせられる。日本に滞在、居住する外国籍をもつ人物や外来の団体・組織を称する言葉だが、韓国、朝鮮系の人々を思い浮かべる人も少なくないだろう。浜野らは、日本人であり、日本にいながら外来のファンク・ミュージックを追究するバンドであることにちなんでバンド名をつけた。

 ファンク・ミュージックのルーツはアフロ・アメリカンにつながる。日本人がそれをやることの矛盾を承知しながら、曲の直訳やスタイルの模倣にとどまらず、日本に根差した独自性のあるファンク・バンドを意図した。“在日ファンク”という言葉がもたらす“不快感”や“嫌悪感”も認識し、そこにこそ日本の病巣があるとまで語っている。

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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