僕は犬も好きですが、も好きです。猫は自分本位なところがいい。犬はいつだって「ご主人様と一緒にいたい」という感じだけれど、猫は何だか、個人の尊厳みたいなものを持っている。まあ要は、好きなように生きてるということなんですが、人間が作った境界を軽々と越えていく遊牧民的な感じがいい。そういう意味で、猫的生き方には魅力を感じますね。

 質問を突き詰めると、「どういう柄がいい柄か」という議論が一つあるかもしれません。キジトラの柄とブランド猫の“きれいな柄”との本質的な違いとは、いったい何か。僕はキジトラの柄って、一番猫らしくてよい柄だなと思いますよ。

 あなたが親友の猫を見てうらやましいと思っても、飼い主失格ではないですが、うらやましいという感情は、持ち始めたらキリがないですよね。僕ももちろん、スイスイ泳げる人とか(僕は泳ぎが苦手なので……)、モテる人とかに対してうらやましいと思ったことはありますよ。

 うらやましい気持ちの正体は、「ちょっとした違いを意識する」ということだと思うけれど、うらやましいという気持ちに執着しないことが大事だと思う。他の人と自分を比べてもいいことって何もないですよ。

 あなたのキジトラは、素晴らしい相棒だと思います。普通で大いに結構、キジトラと幸せな日々を送ってください。

週刊朝日  2018年12月28日号

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前川喜平

前川喜平

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

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