大企業ばかりではない。政治家からすれば、優良なベンチャー企業を支援することには大きなメリットがあるという。

「将来有望なベンチャー企業は、実は資金には困っていない。一番欲しいのは社会的信用です。政治家としては、成功したベンチャー企業の経営者に近づき、彼らを経団連企業の社長さんと食事したりして紹介。さらには審議会の委員にしてあげたりする。ベンチャー企業の経営者にハクをつけてあげるんですよ。彼らは、とても喜んで感謝する。その見返りに自分たちのパーティ券を買わせ、政治献金させる。うまみがあるわけです」(古賀氏)

 経産省は、JICに関する1600億円の2019年度の予算要求は取り下げると明かしたが、今後、第三者の諮問委員会を設けて検討。来春までに新体制を発足し、改めて予算要求を調整するという。14の官民ファンドについて、前出の田中教授はこう話す。

「政府の出資が9割を超えるというのは大き過ぎますね。そうなると、経産省の事例のように、官僚が箸の上げ下ろしにまで干渉するので、ガバナンスが効かなくなる。政府の出資比率は3分の1くらいにすべきで、そうすれば民間の取締役の裁量がもっと生れます。株式会社なので上場するくらい、命懸けでやらないといけない。14のファンドというのも多すぎるので、私は3つくらいで充分だと思います」

 前出の古賀氏もこう話す。

「現在の官民ファンドのシステムでは損をしても自分たちの腹は痛まない上、何の責任もとらなくていい。国民の税金を好き勝手に使えるということ。そのツケは国民に回ってくる。全ての官民ファンドは、即刻廃止したほうがいいと思います」
身内のケンカが思わぬ事態に発展している。(本誌 上田耕司)

※週刊朝日オンライン限定記事

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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