「大阪の場合、市が期待していることは、外からのカルチャーを持ち込むことだった。動物園の公募の場合、そうした園や市の中の改革を目指しているのか、もしくは、園の顔になるような人を引っ張りたいのか、どちらかの可能性が高いです」

 大阪市は当時、橋下徹氏の下、様々な改革を断行。

 校長など多様な役職において、公募を開始していた。

「橋下さんが、記者会見で動物園の公募を発表し、私はHPから応募しました。出来レースではない本当の公募でした」(牧氏)

一方で、ただ公募をするだけでは改革はできないと牧氏は指摘する。

「私の場合、役所出身だったので、構造を理解していたのは大きかった。完全に民間の方からであれば、役所独特の制約に苦労する可能性もある。そこで大事なのは、園長と組んで一緒に改革できるスタッフを側に置くこと。外から来た人間を支える体制をうまくつくってあげるといい。私も部下の課長には助けられましたから」

 千葉市の公募で興味深いのが、年収の規定だ。

 月額59万1千円を支給、手当等を含めると、年収約1 000万円を超える。

 一般からすれば、「そんなにもらえるの?」という反応もあるが、牧氏は「妥当な給与」だという。

「(千葉市の公募のニュースを見て)むしろこんなものか、という感じ。これが500万円ならやらない(笑)。基本、役所の部長級の給与ほどなので、それに値する仕事だと思います」

 退任が決まっている石田園長は、次期園長にこうエールを送る。

「私がきてからやった『リスタート構想』を基本にして、長い目で運営してほしい。新しい動物を入れたり、施設を入れないとお客さんを確保することは厳しい。イベントだけではなかなか集まらないし、宣伝にお金をかけても、その分のお客さんはこない。新しい施設をつくって雰囲気を変えていってほしいです。

 もう一つは動物の福祉の観点を大切にしてもらいたい。今動物の尊厳に関して、時代が敏感になっている。きちんと配慮をしないと園の存亡に関わりますから気をつけてもらいたい」

 新園長の下、風太くんの元気な立ち姿が見られることを祈るばかりだ。(本誌 田中将介)

※週刊朝日オンライン限定記事