──仲村トオルさん演じる実川剛は、当麻と対照的な野心的な人物として描かれています。「組織の中でやりたいことをやるには権力が必要だ」という実川の考え方は、組織で働いたことがある人なら納得するところがあると思いますが。

 その人自身が、どう感じるかだと思うんです。「偉くなりたい」「お金持ちになりたい」と思う人はその道を進んでいけばいいと思いますし、当麻のように純粋に自分のやりたいこと、求められていることを叶えていくことに幸せを感じる人もいる。どちらが正解でも不正解でも、ないと思います。

──当麻と実川、どちらかの生き方を選べるとしたら?

 僕は当麻ですね。「権力を手にしないとできないことがある」という実川の考えも理解はできますけど、権力を手にすることで失うものもあると思うんです。当麻が進む道は困難ではありますが、一人の男として憧れますし、当麻のような人が必要だと思います。

──滝沢さん自身は、どんなことに幸せを感じる?

 ものを作って、喜んでもらうことですかね。

──芸能界に入るときに、「スターになりたい」「有名になりたい」という思いは?

 まったくなかったですね。僕はもともと、プロレスラーになりたかったんです。アイドルになりたいとか、そういう思いがまったくないところからスタートしてしまって、気づいたらずっとやっていた、みたいな。

──そういうなかで、野心を持った人たちと競っていくのは大変なことだったと思いますが。

 そうですね、華やかに見えるかもしれませんが、みんなそれぞれ努力をし、戦っている。大変と思えば大変ですが、それが僕らの仕事なんだと思います。

──年内で芸能界を引退し、タレントの育成やプロデュース業に専念されると発表されましたが、滝沢さんは後輩の面倒見がよいことでも知られています。人の面倒を見たり、育てていくのは嫌いではない?

 嫌いですよ(笑)。別にやらなくていいならやりません。後輩のためというよりは、その子たちを事務所に迎えたジャニー(喜多川)さんの気持ちに応えたくてやっています。もちろん後輩たちはかわいいですけどね。僕は「何のために生きるか」ということが、すごく大事だと思っているんです。生まれてからこれまで、いろんな人に助けられながら自分のために生きてきましたが、これからは人のために生きてみたいと思ったんです。「人のため」というとちょっと聞こえが良すぎてしまうのですが、ある程度の年齢になったら誰もがやっていることだと思うんです。親になって子どものために生きるとか。それが僕の場合は、お世話になった事務所に対して、恩返しをしていきたいということだっただけなんです。

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