春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。JFN系FM全国ネット「サンデーフリッカーズ」毎週日曜朝6時~生放送。メインパーソナリティーで出演中です
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。JFN系FM全国ネット「サンデーフリッカーズ」毎週日曜朝6時~生放送。メインパーソナリティーで出演中です
イラスト/もりいくすお
イラスト/もりいくすお

 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「名作」。

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 ここんところ、「『名作』を書きたい!」という力みがまるでないです。コラムに『名作』という表現が合ってるかわかりませんけども。「力み」というか、「色気」「やまっ気」と言ってもいいかもしれない。

 だってもう自分が先週書いた内容すらも覚えてないですもん。連載200回を過ぎたころから、「あれ? 前にも同じコト書いたかも?」……なんてのがたびたびです。でも、「まぁいいか……読んでない人もいるだろうし……」と。早い話、肩の力が抜けてきたのです。よく言えば。

 ところで『名作』と『傑作』って違うもの? どっちも「優れた作品」なのはわかるけど、どこが違うのか? 『名作落語』とは言うけど『傑作落語』とはあまり言わないなぁ。

『名』のほうが、一般的認知度が高い作品か。わかりやすく言うと、三遊亭圓朝・作『芝浜』は『名作』。林家きく麿・作『パンチラ倶楽部』は『傑作』。余計わかりにくいかな? 『傑作』は、それを推す評者の主観が濃いですかね。まぁとにかく、きく麿兄さんは天才です。ちなみに顔は安美錦に似てますよ。

 横浜にぎわい座という寄席では、毎月『名作落語の夕べ』というタイトルの落語会が開かれています。私が前座のころは司会者の玉置宏さんがにぎわい座の館長でした。

『名作落語』というからには厳選された落語が演じられるイメージですが、そんなこともなく……古典落語なら何でもかかってるかんじです。もっとも古今の噺家が口伝で残してきた古典落語は、今残っている時点ですでに『名作』なんだね。 

『名作落語の夕べ』の私的見所は、玉置さんがその日演じられる予定の『名作落語』を解説するオープニングトーク。落語大好き玉置さんは、舞台袖にいる時から超ゴキゲンです。私たち前座にも積極的にバンバン話しかけてきます。  

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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