千田:大名は家臣団にいかにやる気をもってもらえるかが大事。今の組織もそうですが、出世したいとか社長になりたいという人もいれば、ただ気持ちよく仕事したいという人もいますよね。今、働き方改革といわれている日本では信長・家康型の組織は時代に逆行しますね(笑)。

磯田:信長・家康の「秩序の時代」は、まさに1970年代までの日本で、あの時代は引っ越しさせて社宅に入れて、合宿させれば、組織として強くなれた。内職以外の兼業もダメ、武士と町人を兼ねるのもダメ。「近世大名家臣団」の影響を受けて、終身雇用・年功序列の日本的会社雇用組織もあるかもしれない。しかし、それが、ここへきて、限界に達している。会社や組織からの個人の独立度は高まろうとしている。大学を出て、生涯、1社とだけ雇用契約を結んで生きる時代は終わりかもしれない。

 信長・家康以前の守護大名時代のような乱の時代です。サラリーマンも生存を求めて、いろんな生き方をさぐりはじめる時代です。それぞれが身の振り方を考えていくためにも、考えながら歴史を見ることも大切ではないかと思います。

(取材・構成/上永哲矢)

※週刊朝日 2018年12月14日号より抜粋