「高齢者は、食事を制限しすぎて低栄養になるデメリットのほうが、食事制限によるメリットより大きいとの考え方があります。15年に発表された『SPRINT』という研究の結果、高齢者であっても収縮期血圧を120mmHg未満にコントロールすれば、心筋梗塞、脳梗塞、それらによる死亡率が下がることがわかりましたので、血圧はしっかりとコントロールするべきだと考えられます。ただ、それ以外では、ストイックな食事制限を設けずに色々と食べたほうがよいと考えられています」

 健康によいことが複数の研究で証明されている食品は、魚、野菜、果物、茶色の炭水化物、オリーブオイル、ナッツ類、豆類だ。

 果物は、太ると考えて敬遠する人もいる。ただ、薬剤師で栄養学博士の宇多川久美子さんは間食に果物を薦めているという。「果物には食物繊維が含まれており、血糖値上昇を抑えてくれます。ですから、お菓子を食べるよりも血糖値が上がりにくいのです」

 ビタミン類や消化を助ける酵素も豊富。100グラムあたりでは菓子類より低カロリーだ。

 そんな果物だが、フルーツジュースとなると話が違う、というのは津川さん。

「海外のホテルなどでは、朝食に必ずオレンジジュースが出て、健康によいイメージがあります。しかし、果物が糖尿病のリスクを下げる一方で、フルーツジュースは糖尿病のリスクを上げるという研究結果もあります。果物は果糖と食物繊維を同時にとれるのに対し、ジュースになると加工過程で不溶性の食物繊維の一部が取り除かれることが、この違いの原因の一つであると考えられています」

 炭水化物と同様に、果物というイメージだけで一緒くたにせず、わけて考えることが必要なようだ。

 人生100年時代と言われる今や、一生に口にする食事は単純計算で10万食にも及ぶ。最新の研究成果を知り、今日から食べ物と食べ方を見直しませんか。(本誌・岩下明日香)

週刊朝日  2018年12月14日号