番組では全部、本心と逆を言ってやろうと思ったの。「アンタ、ものまねなんて、いい迷惑よ」「この衣装もなあに? あたしこんな安物着てないわよ」って。上から目線で言ったら、それがウケちゃって。

 それで「タンスにゴン」のCMがきた。あれでブレークしたのよ。「もっとはじっこ歩きなさいよ」って。あのときは「やっときたわ、あたしの時代が!」って思った(笑)。

 つくづく「キャラクター」ってすごいなと思います。歌手は曲がヒットしたら、曲は残るけど人は忘れられる。でも、キャラクターってずっと残るんだもの。

 いまでこそオネエ言葉でやっているけれど、昔は普通に自分のことを「僕」って言ってたの。でもキャバレーで歌っているとき、うるさいお客さんに「おだまり!」と言ったらウケた。新宿2丁目でオネエ言葉のやりとりを聞いていたから、それを取り入れたの。

 先日、高校の学園祭に呼ばれたの。「もう私なんてウケないんじゃないの?」って思ったらダンス科の子たちが「さそり座の女」に合わせて踊ってくれて、大ウケだった。私、それですごく自信がついたの。

 いまも幅広く、たくさんの人に支持してもらえるのって、やっぱりこのキャラクターができたからなのよね。だから外を歩くにしても「美川憲一」で歩かなきゃいけないと思うの。握手してください、って言ってくれる人には応えたい。そう言ってもらえるうちが花だから。

■暗い時代があって本当のスタート

――病気らしい病気をしたことがなかった美川だが、昨年ロサンゼルスでの初コンサートの前に現地で倒れた。今年2月には骨折も経験。無事に回復したが、72歳にして体が資本だと実感した。

 リハーサルから調子が悪かったんです。体が硬直して動かないし、首もグラグラで力が入らない。すぐ病院に運ばれて、MRIや検査を受けた。結局はっきりした病名はわからなかったけど、ホルモンバランスの乱れが原因で、免疫が落ちて体に菌が入ったみたい。抗生物質が効いて1日半で退院して、コンサートができた。あのときは神様が降りてきたと思った。

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