「15年1月に相続税の基礎控除額が引き下げられ、課税対象が広がったことで、税を余計に払ってしまう人が増えています。払いすぎの原因で特に多いのが不動産。不動産は一つひとつ異なり、その評価には専門知識や経験が必要です。専門家の間でも差が生じることがあるので、相続に詳しい人に相談しましょう」(佐藤税理士)

 例えば、道路に接していなかったり、形の悪い土地だったりすれば、評価額は下がる。評価は一定のルールに基づくが、自治体によって基準が異なることもある。土地の評価が下がる条件を一つ見逃すだけで、評価額は大きく変わる。

「極端なケースでは納めた相続税の9割が戻ってきたこともあります」(同)

 逆に、納税額が足りなかった場合も、税務署に申告しなければならない。納税後に新たな資産が見つかった場合などだ。

 修正申告は不足分に加え、無申告加算税や延滞税を納める必要がある。自主的に申告せず、税務署の調査を受けてからだと、多額のペナルティーが科せられてしまう。

 相続人に迷惑をかけないよう、亡くなる前に自分の財産の状況を伝えておこう。遺言を書く場合は、財産目録に漏れがないよう徹底する。相続人はそれをもとに適正に納税する。税務署の調査能力は高いため、資産隠しはばれる可能性が高い。意図的な多額の申告漏れで「悪質」だと判断されれば、刑事責任を追及されることもある。

 亡くなってもみんなが困らないように、今から準備をしておきたい。(本誌相続取材班)

週刊朝日  2018年12月14日号より抜粋