拙い言葉であっても、心がこもっていたら、その意図はあたしたちに伝わるはず。

 そして、この件で不正を働かされ自殺した方の、仏壇に手を合わせにいっただろう。フットワークが軽いのは、昭恵さんの良いところだったし。

 タラップを安倍首相と手をつなぎ降りてくる昭恵さんは、黒とベージュのスーツを着ていた。片襟だけがボーダー模様になっている、素敵なスーツだ。そして、はにかむような笑顔。

(ほんとに笑えてますか?)

 とあたしは思った。

 笑えているなら、怖い人だ。普通は、素敵なスーツを着ていても、気は晴れないでしょう?

 ひょっとして、つながれた手が、あなたを止める鎖になっているの? あれほどあたしたち国民と近づきたがったあなたなのに、なぜ逃げる?

週刊朝日  2018年12月14日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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