日記の内容は、日付、時間、かいた部分、かゆみの有無、きっかけ・状況の5項目だ。「もれなく記録しなければ」と構えず、気がついたときに書くだけでよい。それでも、自分の掻破行動のパターンがわかってくる。

「1日100回かいているとしたら、30回ぐらいは、かゆくないのになんとなくかいているものです。日記をつけると自分の行為を意識するようになるので、なんとなくの行為にブレーキがかかって掻破行動が減ってきますし、かゆいときもより適切に対処できるようになります」

 掻破行動が減ると、症状は確実によくなっていく。そうした成功体験を積み重ね、自分の治療行動は正しいと自信を持つと、ネガティブな認知も変わってくることが多いという。檜垣医師は多くの患者から、「ずっとアトピー性皮膚炎に悩まされて、病気が嫌でたまらなかったけれど、今は気にならなくなった」という言葉を聞いているそうだ。

 一方、掻破行動が減って皮膚症状が改善し、以前は赤かった部位の赤みが消えても、残っている症状が気になり、「またかいてしまった。薬がきちんと塗れなかった」と自分を責める人も少なくない。このような完璧主義が、治療意欲を低下させることもある。

 これに対して檜垣医師は、「60点主義」を勧める。

登山に例えて、治療前をふもと、完治を頂上とすると、5合目をどうとらえるかです。頂上を見ればまだまだですが、ふもとからはずいぶん登っており、達成感もあるはず。100点を求めると、それがストレスになりかねません。60点主義は、アトピー性皮膚炎を上手にコントロールする秘訣です」

◯若松町こころとひふのクリニック院長
檜垣祐子医師

(文/竹本和代)

週刊朝日 2018年12月14日号から