例えば、職場でちょっと嫌なことがあると、心理反応としては不安やうつ、イライラ、焦りなどの気分が、身体反応では発汗や動悸といった自律神経症状などが起こりやすい。そして、アトピー性皮膚炎患者によくみられる好ましくない行動反応が掻破行動だ。

 こうしたストレス反応を軽減するには認知を修正するのが最良だが、長年培った考え方の癖は簡単には修正できない。そこで、まずはストレス反応をアプローチの対象にする。どれに働きかけてもよいが、心理反応に対して皮膚科でできることは多くない。檜垣医師は、共感を持って患者の話を聞く「傾聴」を心がけているという。身体反応として生じるからだの症状には薬物療法をおこなう。

 残った行動反応に対するアプローチが、悪化を防ぐ治療の糸口になる。それが、掻破行動を別の行動に修正する行動療法だ。

 ストレスによって掻破行動が誘発されるということは、かいてストレスを解消しようとしていることを意味する。だから、ほかの解消法を見つけることが大事だ。普段の生活のなかで、適度なスポーツや音楽など好きなことや楽しいことをする時間をつくると、掻破行動が減ってくる。

 また、掻破行動は、緊張が緩んでホッとしたときに起こりやすいことがわかっている。職場や学校ではあまりかかないのに、帰宅後テレビを見ているときや、トイレに入っているときなどに、ついかいてしまう。かくと気持ちがよいので習慣になりやすく、かゆくなくてもかく癖がつく。

■日記をつけて行動パターンを知る

 掻破行動の習慣化を防ぐためには、掻破を別の行動に置き換えるとよい。行動の修正は認知の修正に比べてハードルが低く、成功率が高い。例えば、掻破行動に気づいたら手を組む、リラックスボールを握るなど、やりやすい方法を実践する。かいているときは交感神経の働きが活発になっているので、深呼吸するのも効果的だ。

 無意識の掻破行動をできるだけ減らすには、どんなとき、どんな状況でかいているかを知ることが大事だ。そのために「スクラッチ日記」をつけることを、檜垣医師は勧める。

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完璧主義が治療意欲を低下