スイスの山を愛したメラノーマ患者の最期 期待の「がん免疫療法」に皮膚科医の想いは? (1/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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スイスの山を愛したメラノーマ患者の最期 期待の「がん免疫療法」に皮膚科医の想いは?

連載「現役皮膚科医がつづる “患者さんと一緒に考えたいこと、伝えたいこと”」

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大塚篤司週刊朝日#ヘルス

大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

山を愛した青年の最期は…(写真/getty images)

山を愛した青年の最期は…(写真/getty images)

 ノーベル賞の授賞式が12月10日、スウェーデン・ストックホルムで開催され、医学生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑・特別教授が参加しました。京都大学医学部特定准教授で皮膚科医の大塚篤司医師が、スイス留学で学んだ「がん免疫療法」の思い出を語ります。

*  *  *
 私はがん免疫療法を2012年から2年間、留学先のスイスで学びました。スイスには、タレントのイモトアヤコさんが挑戦して話題となった山、アイガーがあります。その北壁は「死の壁」と恐れられ、困難で危険な登攀(とうはん)に多くの登山家が命を失いました。アイガーのすぐ隣には、ユングフラウ、メンヒと4000メートル級の山々が連なり、オーバーランド三山と呼ばれています。絶壁が危険な山々とは対照的に、その麓にはゆるやかなハイキングコースが存在します。終着地に存在するクライネ・シャイデックには、ビールのおいしいオープンテラスカフェがあり、本場アルプスを眺めながらの白ビールは渇いた喉はもちろん心まで癒やしてくれます。

 スイスで有名なのは山だけではありません。大手製薬会社がスイス北部のバーゼルに本社を置き、新薬開発の分野においても世界トップクラスです。私がスイスを留学先に選んだ理由は、最先端の環境と、そして「ボス」です。スイス留学中の私のボスは、ハリソン・フォードに似たドイツ人皮膚科医。彼は皮膚がんの分野では超がつくほどの有名人で、世界中を飛び回って講演をしていました。

 私は彼のもとで、がん免疫療法の多くを学びました。臨床はもちろん基礎的な研究まで。日本に帰国してからも彼は私のことを気にかけてくれ、困難な症例を経験すれば的確なアドバイスをスイスから送ってくれました。まさに非の打ち所のないボスでしたが、おちゃめな部分もあります。私の無料メッセージアプリWhatsAppには、彼から送られてきた「謎の木」や「どこの国かわからない景色」がコメントなしに並んでいます。超一流でありながら、誰にでも親切に分け隔てなく付き合う彼を、私は心から尊敬しています。登山とビールを愛する彼は、病院のみんなからも愛されていました。


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