結果、チーフADは他の部署に異動した。そして、ディレクターAさんのことを放っておくわけにもいかなくなり、Aさんは番組を外れた。

 そして、Aさんが外れたことで空気は良くなった。Aさんがいなくなったら番組は成立しない……わけではなかった。正直、かなり大変だったのは事実。だけど、みんなが逆に力を合わせて頑張り、番組はさらに進化していった。

 あのとき、Aさんを追い出していなかったら、番組はもっと早くに終わっていただろうし、なにより、もっとたくさんの人が傷ついて、番組とこの業界を嫌いになって去っていっただろう。チーフADの勇気、すごかったなと思う。

 日産のニュースを見て、他人事だと思ってる人は少ないだろう。どんな会社にだって、あそこまで大きくないにしても、似たようなことはある。

 今回ついた大きな傷が、会社としてさらに強く大きくなる通過点だったと思える日がきっと来ると信じたい。

※週刊朝日 2018年12月7日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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