<入学定員充足率が1.0倍を超える入学者に見合う額をさらに減額する予定である。一方で、定員管理の適正化に向けた努力をする中で、結果として定員を下回ることも考えられることから、入学定員充足率が0.95倍以上、1.0倍以下の場合には、一定の増額措置を行う予定である>

 併願が多い私立大では、合格者の手続き率を予想するのが難しい。予定どおりに減額・増額措置が実施されるのか注目されていたが、今年9月、「減額措置の実施を当面見送り、21年度をめどに実施の要否を再検討する」ことに決まった。

 減額措置が当面見送りになったのは、入学定員管理の厳格化によって効果が見えたからだ。

 3大都市圏の大~中規模大学の入学定員を超える入学者数は、14年度の2万7479人から17年度には1万9648人と改善された。また、定員充足率をみると、3大都市圏の入学定員充足率は14年度の106.22%から、18年度には103.18%、その他の地域は95.87%から100.81%となり、効果が表れている。

 増額措置については予定どおり実施されることとなり、19年度から「学部などごとの入学定員充足率が90~94%の場合は+2%、95~100%の場合には+4%」と決定した。

 河合塾教育情報部の富沢弘和部長はこんな感想を漏らす。

「各大学ともに合格者数の調整に苦労していましたから、減額措置が見送りになり、ほっとしていることでしょう」

 法政大の菊池センター長もこう話す。

「どの大学も、ひとまず安心していると思います。文科省が当初の予定だからとゴリ押しするのではなく、基準の厳格化による効果や大学の実情などについてヒアリングし、調整してくれたことで、信頼感が増しました」

 減額のペナルティーはなくなったが、19年の合格者数はどうなるのだろうか。

「学部新設のために合格者数を絞り込み、18年の定員充足率を低く抑えた大学では、絞り込みを緩和する可能性もあると思います。他大学の影響を受けるため、合格者の手続き率を予測するのは依然として難しいですが、前年と同様に定員充足率が1.0倍から大きく乖離(かいり)しないように留意していきたいと思います。ここ1~2年の私大文系の入試は異常なくらいに難化しましたが、全体として19年は少し落ち着いてくるのではないでしょうか」(菊池センター長)

 一方で、19年に学部を新設する大学は、18年は気が抜けない入試だった。新設するための基準が厳しくなったからだ。各大学の入学定員、入学者数、入学定員充足率を示したが、18年に大きく定員割れをしている大学が複数ある。

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