日産自動車の株主総会で話すカルロス・ゴーン会長(当時)=6月、同社提供
日産自動車の株主総会で話すカルロス・ゴーン会長(当時)=6月、同社提供
カルロス・ゴーン氏を巡る主な疑惑(週刊朝日 2018年12月7日号より)
カルロス・ゴーン氏を巡る主な疑惑(週刊朝日 2018年12月7日号より)
カルロス・ゴーン氏の語録(週刊朝日 2018年12月7日号より)
カルロス・ゴーン氏の語録(週刊朝日 2018年12月7日号より)
日産自動車の従業員の状況(週刊朝日 2018年12月7日号より)
日産自動車の従業員の状況(週刊朝日 2018年12月7日号より)
ルノー・日産自動車・三菱自動車の関係(週刊朝日 2018年12月7日号より)
ルノー・日産自動車・三菱自動車の関係(週刊朝日 2018年12月7日号より)

 日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が逮捕された。自分の報酬を少なく装い、会社を長年私物化していたとされる。それを許してきた日本人のイエスマンたちが、今回は周到な準備で事実上の“クーデター”を成し遂げ、スピード解任。逮捕をひそかに待ち望んでいた人たちとは……。

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「海外では数十億円の役員報酬は珍しくありません。ゴーン前会長は『日本企業の役員報酬はライバルより少なすぎる』と繰り返し訴えていました。仕事が大好きで、自分の評価のモノサシとしてお金にこだわった。でも、虚偽記載は投資家らをあざむく犯罪。私的な費用を会社につけ回すのも、特別背任や横領の罪になる可能性があります」(ゴーン前会長を知る全国紙記者)

 11月19日午後4時35分ごろ、機体記号「N155AN」のビジネスジェット機が羽田空港に着陸した。遠くから見ると「NISSAN」の文字にも見えるこの機体に、ゴーン前会長が乗っていた。東京地検特捜部はすぐに任意同行を求め、横浜市の日産本社や都内の自宅マンションなどに捜索に入った。

 逮捕の容疑は金融商品取引法違反。2010~14年度の5年間に役員報酬が計約100億円だったにもかかわらず、計約50億円に見せかけていた。上場企業が毎年提出しなければいけない「有価証券報告書」に、うその記載をした罪(10年以下の懲役か1千万円以下の罰金)に問われた。

 虚偽記載はゴーン前会長が、側近のグレッグ・ケリー前代表取締役にメールなどで指示したとみられる。ケリー前代表取締役は実際の対応を部下に命じていたとして、ゴーン前会長とともに逮捕された。

 19日午後10時過ぎに本社で緊急会見した西川広人(さいかわひろと)社長は、会長に権力が集中していたことを批判し、虚偽記載以外にも資金の私的流用など重大な不正行為があったことを明らかにした。

 会社側は具体的な内容を公表していないが、複数の疑惑が浮上。私的な費用を会社側に負担させていたとみられる。

 ゴーン前会長は、仏自動車大手ルノーから1999年に日産に乗り込んできた。“コストカッター”として合理化を進め、これまでにグループで4万人を超える人員を削減。いまや日産グループの従業員は、国内より海外のほうが多い。

 経営危機を救ったカリスマの信頼は、今回の事件で一気に失墜した。日産は22日夜の臨時取締役会で、会長の役職解任を全会一致で決めた。20年近く経営トップとして君臨してきたが、最後の日は東京拘置所で迎えた。数々の「語録」があるが、今の心境は言葉では表しにくいだろう。

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