電動歯ブラシで難しいのは毛先の当て方です。ただなんとなく歯に当てているだけではプラークは落とせません。

 歯は前歯や犬歯、奥歯などそれぞれに役割が異なるため、大きさや形が違います。そのため、毛先を斜めに当てたり、ブラシの先を当てたり歯にあった当て方をしないと、汚れがしっかり取れないのです。

 さらに歯並びが悪い部分は当て方には特にテクニックが必要です。もちろん、手磨きの場合と同じように、毛先が広がらないうちにヘッドを定期的に(メーカーにもよるが、だいたい3カ月程度)交換するなど、使用上の注意を守ることも大事です。

 言い方を変えれば、電動歯ブラシは普段の手磨きがきちんとできる人には移行しやすく、そうでない場合、逆効果になってしまうリスクがあるということ。歯磨きのやり方に自信がない人は、電動歯ブラシの前にまず、手磨きの正しい磨き方を身に着けるのも一つの方法ですね。そして電動歯ブラシを導入した後にあらためて歯科医院で磨き方の指導を受ければ完璧です。

 なお、電動歯ブラシは自分に合ったものを選びましょう。現在のブラシの動きと機能によって、大きく次の三つに分けられます。

〇高速回転タイプ=丸い歯ブラシが高速回転して汚れを落とす。
〇音波歯ブラシ=電動歯ブラシに音波振動を発生させ、プラークを除去する。
〇超音波歯ブラシ=ブラシから超音波の振動が発生、プラークを除去するほか、プラークの中の細菌そのものを破壊する力があるとされる。

 歯周病の人には音波歯ブラシや超音波歯ブラシがおすすめですが、ヘッドの形などにもメーカーごとに違いがあります。個人個人の歯ぐきや歯並びによっても合う製品は違うので、迷ったらぜひ、かかりつけの歯科医院に相談することをおすすめします。

 なお、電動歯ブラシでも手磨きでも、完璧に取り切れないのが歯と歯の隙間のプラークです。この部分には必ずデンタルフロスや歯間ブラシを使うようにしてください。

◯若林健史(わかばやし・けんじ)
歯科医師。若林歯科医院院長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演

著者プロフィールを見る
若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

若林健史の記事一覧はこちら