「血管の壁の内側は、薄い内皮という細胞の膜で覆われています。動脈硬化は内皮の障害で始まり、内皮の下の内膜や中膜に脂質が沈着してプラーク(粥腫(じゅくしゅ))ができ、盛り上がっていきます。問題は、プラークが心臓の筋肉に血液を供給する冠動脈にできたときです。プラークを覆う被膜が破れると、その部分を中心に血液がかたまり、血管を詰まらせて心筋梗塞を起こすのです」

 注意しておきたいのは、程度の差こそあれ全身の動脈にこうした変化が起きていることです。どこかで動脈硬化を原因とした疾患が起きていれば、心臓の冠動脈や脳の動脈もまた、危険な水域まで達している可能性が高いと考えられます。動脈硬化を原因とする心筋梗塞や脳梗塞以外の疾患として代表的なのが、PAD(末梢動脈疾患)と呼ばれる疾患。主に足の血管が詰まることで発症し、重症化すると足の切断にもつながります。もし、この疾患が発症していたら、心筋梗塞や脳梗塞のリスクもかなり高い状態になっているといえます。慢性腎臓病も、主要な原因の一つに動脈硬化が含まれているため、発症していたら注意が必要となります。

 また、糖尿病を発症していると、それだけで心筋梗塞になりやすいことがわかっています。

「一度心筋梗塞を発症した人は、根本的な血管の状態が変わらないために再発しやすくなっています。心筋梗塞を発症したことがなくても糖尿病を発症している人は、一度、心筋梗塞を発症した人と比較して、ほぼ同じ確率で心筋梗塞を起こすという研究結果があります」(山科医師)

◯取材協力

東京医科大学病院健診予防医学センター長
山科 章医師

山王メディカルセンター脳血管センター長
内山真一郎医師

(文/鈴木健太)

※ 週刊朝日ムック「突然死を防ぐ脳と心臓のいい病院2019」から