戦時下で多くの命を奪った「脚気」が感染症と疑われた理由 (1/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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戦時下で多くの命を奪った「脚気」が感染症と疑われた理由

連載「ワインは毒か、それとも薬か」

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岩田健太郎週刊朝日#ヘルス
岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』など

岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』など

日本の軍隊で脚気が流行し、多くの軍人が命を落とした日露戦争。ビタミンB1が入った麦飯などを食べさせた結果、海軍の脚気は激減した(写真:getty images)

日本の軍隊で脚気が流行し、多くの軍人が命を落とした日露戦争。ビタミンB1が入った麦飯などを食べさせた結果、海軍の脚気は激減した(写真:getty images)

 感染症は微生物が起こす病気である。そして、ワインや日本酒などのアルコールは、微生物が発酵によって作り出す飲み物である。両者の共通項は、とても多いのだ。感染症を専門とする医師であり、健康に関するプロであると同時に、日本ソムリエ協会認定のシニア・ワイン・エキスパートでもある岩田健太郎先生が「ワインと健康の関係」について解説する。

*  *  *
 パスツールが『ワインの研究』を著しても、化学者の「フォン・リービッヒ」はこれを読まなかったという。彼はパスツールの微生物による「発酵」説を頑なに拒否し続けた。これは単にフォン・リービッヒが頑迷なわからず屋だったためではない。彼は彼で、偉大な実験成果を出していたのだ。

 フォン・リービッヒは実験で、(非生物である)たんぱく質が卵白などを分解できることを示した。そのため、やっぱり生物がアルコールを造っているのではなく、物質(たんぱく質)が原因ではないか、と思ったのだ。

 このたんぱく質は、今日では「酵素」と呼ばれている。

■化学反応を早める物質を触媒といい、酵素もその一種

 酵素(enzyme)とは、化学反応が起きるときの触媒のことだ。しょくばい?なんじゃそれ。それは、そこにある化学反応のスピードを速めてくれるような物質のことだ。英語ではcatalyzerと書きカタライザーと読む。触媒作用のことはcatalysis、カタリシスと読む。もともとはギリシャ語由来の言葉で、「分解」の意味だ。

 まとめると、触媒とは化学反応を早める物質のことで、触媒の一種に酵素がある。酵素の多くは、たんぱく質からできている。ついでに言えば、たんぱく質はアミノ酸からできている。

 で、ですね。そのたんぱく質は何が作っているかというと、これは生物なんですねー。そう、酵素は微生物が作る物質(たんぱく質)なのだ。微生物が酵素を作り、酵素が発酵という化学反応を起こすときの触媒になっている。わかりますか?


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