また、韓国はサムスンの子会社が開発した無人化された防御システムを北朝鮮との軍事境界線周辺に配置している。越境して入国してくる者を熱センサーで感知して撃つ。佐藤氏によれば、韓国は詳細な情報を明かさないが、人間が操作するマニュアル・モードのほかに、自動射撃するモードも組み込まれている可能性が高いという。このほか、命中率が高いといわれるイスラエルのミサイル防衛システム「アイアンドーム」などの兵器も、LAWSの完成を展望できる段階に入っているというのだ。

 だが、佐藤氏はこうも指摘する。

「人間が介在しないAIの兵器利用や、キラーロボットが勝手に戦争をする事態を最も警戒しているのは、実は軍人なのです。これは各国共通です。開戦に踏み切るのも、停戦を決めるのも政治判断です。しかし政治判断が及ばず、戦闘のコントロールが利かなくなれば、それこそ核戦争になりかねません。人間は戦争を避けたいのに、機械が戦争を選択すると、予期しない形で人類が滅びることになります」

 実際、コンピューターの判断によって核戦争の危機に瀕(ひん)した事件があった。1983年9月、ソ連(当時)の早期警戒システムが、米国から弾道ミサイル5発がソ連に向けて発射されたと誤って探知し、アラーム音が鳴り響いた。しかし、当直だった空軍中佐は反撃の措置を取らず、システムの誤作動だと判断した。米国が本気で核攻撃を仕掛けてくるのならば、もっと大規模な攻撃になるはずだ。たった5発ではソ連側から報復攻撃を受けるのは避けられず、非合理的だと思ったからだった。

「人間の合理的判断があったから回避できたのであって、機械にすべて委ねていると本当に核戦争が起きかねないのです」(佐藤氏)

(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2018年11月30日号より抜粋