クラウドファンディングやオンラインサロンなど、ウェブを全面活用する一方で、今回の新刊や絵本など、紙の本も出版し続ける西野さんにとって、本の価値とはどのようなものなのだろうか。

「紙の本というのは移動するときに必ず人が介在する。人が介在することを感じられるんですよね。やっぱり人が介在するものが好きです。人が好きなんです。人が嫌いだったら、自分だけが勝てばいいとなっていたと思うのですが、一人でゴールテープ切っても、周りに誰もいなかったら楽しくない。やっぱり人がいてくれるほうがいいですね」

 絵本『えんとつ町のプペル』がベストセラーになったことで、学んだことがある。

「みんなの判断基準は、結局数字なんだということが分かりました。もちろん内容は、誰にも負けていない。だけど、内容や考え方では、世界はなかなか変わらない。だけど、たとえば本がこれだけ売れているという、数字が判断の材料になるんです。内容だけ勝ってもしかたなくて、数字がともなわないと意味がない。お金の話もそうなのですが、数字から逃げちゃダメだということを学べました」

 常に先を見て動く西野さんだが、新刊『新世界』が発売された次の瞬間から、もう「次」を見ているのではないだろうか。

「そうですね。今はホテルを作ってます。『えんとつ町のプペル』ホテルです。次のホテルとはどんなものなのか、ホテルを選ぶ理由は、といったことを考えながら作っているところです」

『新世界』の中で、お笑いコンビ・キングコングとしてブレイクし、一躍人気芸人の仲間入りをした。それでも明石家さんまやビートたけし、タモリといった、大先輩は、まだ背中しか見えなかったと記している。

「25歳のときでしたね。あ、ダメだ、このままじゃたけしさんやタモリさん、さんまさんを抜けずに終わるぞと思って。それは嫌だなと。今は違う競技をやっているような感覚ですね。同じ競技で追いつこうとしない。大好きでむちゃくちゃリスペクトする先輩方とは違うやり方で、ちゃんと追いかけて追い抜きたいなと思っています。今は、芸人らしさというのは、生き様で考えるようになっています。そんななかで、西野が一番芸人らしかった、芸人ぽい生きざましてるとなっていけたらいいですね」

 新世界への挑戦は、続く。(本誌・太田サトル)

※週刊朝日オンライン限定記事