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Q 生存率を告げられて、ショック!

A あくまで参考程度に受け止めましょう

 医師から病期の説明を受けると同時に生存率を告げられることがあります。よく使われるのが5年生存率で診断や治療を受けた患者のうち、5年後に生存している割合を示すもので、病期ごとのデータもあります。

 けれどもあくまで割合なので、例えば下のグラフのように大腸がんのIV期の5年生存率は約20%ですが、実際には早くに亡くなった人もいれば、10年以上生きた人もいるはずです。

 国立がん研究センターは、「がん患者の10年生存率はがん全体では55・5%」と発表しました(2018年)。

「この10年生存率のデータに不安を感じた患者さんもいたようですが、これは10年以上前にがんと診断され、治療を受けた患者さんのデータです。当時より現在の治療は確実に進歩しています。数字の意味をよく理解することが大切です」(保坂サイコオンコロジー・クリニック・保坂隆医師)

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Q 治療はすぐに始めなければいけない?

A がんの種類や性質によるので担当医に確認を

 がんの種類や性質によって、進行が遅く、すぐに治療をしなくていい場合もあれば、進行が速く、なるべく早く治療をしたほうがいい場合もあります。

 医師はそうした個々のがんに合わせて治療するタイミングを提案しているはずなので、疑問や不安があれば、なぜそのタイミングなのか納得できるように聞いてみましょう。

 仕事や家庭の都合などで、治療開始を延期したいといった事情があることもあるでしょう。そうした場合は、遠慮せずにその旨を担当医に相談し、医学的な判断を求めましょう。

 がんの場合、たとえ進行が速いタイプでも、その多くは一刻を争うものではありません。少しの延期なら、対応してもらえる可能性があります。

 一方、手術など治療のタイミングが2~3カ月先だと告げられると「その間に進行するのではないか」「一刻も早く切除してほしい」など、不安に感じる場合もあります。医師がそこまで手術をしなくても、がんの進行に影響しないと判断した結果だと考えられますが、なぜそのタイミングなのか、がんが進行しないのか、担当医によく確認して不安を解消しておきましょう。

 手術まで時間があればその時間を有効活用して、自分の病気や治療について調べたり、「がん相談支援センター」を活用したり、不安なことなどがあれば、セカンドオピニオンを聞いたりすることも一つの方法です。有意義に過ごすことで、万全の態勢で満足のいく治療を受けることにつながります。

【監修】
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長
保坂 隆医師

都立駒込病院がん化学療法看護認定看護師
春藤紫乃看護師

(文/中寺暁子)

※週刊朝日ムック「がんで困ったときに開く本2019」から