イラスト/CHARAPHIC LAB Co. Ltd.
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 がんは2人に1人かかるといわれ、がんと告知される場面ではさまざまな困惑に遭遇します。週刊朝日ムック「がんで困ったときに開く本2019」では、Q&A形式で「告知されて困った」に関する悩み・疑問に専門家が回答しています。ここでは、「がんでも告知してほしくない」「治療はすぐに始めなければいけない?」など4問について、保坂サイコオンコロジー・クリニック院長の保坂隆医師と都立駒込病院がん化学療法看護認定看護師の春藤紫乃看護師に回答してもらった内容を紹介します。

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Q がんでも告知してほしくない

A 告知を受けないことのデメリットを知っておきましょう

 かつては胃がんなら胃潰瘍というように、特に進行したがんの場合、本人に告知しないことが主流でした。しかし、患者が医師から病気について十分に説明を受け、理解・納得したうえで検査や治療を受けることに同意する「インフォームド・コンセント」が普及し、現在は本人に告知をするのが一般的です。しかし依然として告知しない場合もあります。

 一つは本人が告知してほしくない旨を医師に伝えるケースです。しかし治療が始まるとがんではないはずなのに、抗がん剤を使用するなど矛盾点が出てきて、逆に不安がつのることもあります。

 実際に多いのは家族が「父は気が弱いから」といった理由で本人に告知しないことを望む場合です。

「家族は本人に真実を見透かされないため面会時間を減らし、面会した際には表面的な話しかできなくなります。そして黙っているつらさから自分の心のケアに時間を費やし、患者は孤立していくのです」(保坂サイコオンコロジー・クリニック・保坂隆医師)

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Q ショックで医師の説明を何も覚えていない

A 再度主治医との面談の予約をとりましょう

 がん告知など、人は大きなストレスに遭遇したとき、まず衝撃を受けます。「告知を受けてどうやって家に帰ったのか覚えていない」など、頭が真っ白の状態になります。医師の説明を覚えていないのは当然のことです。

 この場合は、事情を話して再度主治医との面談の予約をとりましょう。その際は心身ともにサポートしてくれるような家族や友人に同席してもらうことをおすすめします。それが難しければ看護師に同席してもらい、医師から説明を受けたあとに補足してもらうこともできます。あらかじめ医師に確認したいことをメモしておくのも役立ちます。

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