当選回数の多いベテランからは、若手に質問の機会を譲っているという回答も相次いだ。ベテランになるほど調整や運営役を担うため、発言が控えめになるというのだ。

「自分の選挙区の有権者に『質問は若い人に譲っている』などと説明したら、『じゃあ若い人に投票します』と言われてしまうのではないでしょうか。長くそうやってきたので問題だとは感じていないのかもしれないが、議員のあり方として本当にそれでいいのか。ベテランだからこそ、自分の経験を生かして質問するべきでしょう」(磯山氏)

 議員立法にも制度的な問題がある。

 先の通常国会において衆院に出された議員立法では、発議者として名を連ねた自民党議員は10人、それに対し野党は67人。議員立法に詳しい同志社大学の武蔵勝宏教授は、「内閣の提出法律案を優先している背景がある」という。

 自民党議員が議員立法を出す場合、内閣提出法律案の審議に影響しないよう、確実に採択される見通しがあるものに限られがちだ。議員立法をする際には党の事前審査を受けた上で、承認されなければならないという慣例もある。

 議員立法を活用すれば政府が対応しにくい課題に超党派で取り組むこともできるが、それを阻害するような仕組みがあるのだ。武蔵教授はこう語る。

「国会で多数を占める党が内閣をつくる『議院内閣制』のもとでは与党が政府案を通すのは当然だという面もある。だが、議員による立法を軽視していいという話ではない。利益誘導法案が中心だったという問題はあったが、田中角栄は議員立法に積極的に取り組んだ。彼のような人がいまこそ求められているが、政府のほうを向いている人が多く、現状を変える動きは出てこない。議員立法をしやすい仕組みを各党は整備するべきです」

“密室”である与党の事前審査が重視され、議員立法は軽視されがち。議員が政府のほうばかり向いていては、政治不信は高まる。長年の慣例も、時代にそぐわなければ変えていけばいい。仕事ぶりが伝わらないというなら、議員自ら情報をもっと公開するべきだろう。“ざんねん”だと感じているのは議員ではなく、有権者一人ひとりだ。(文中敬称略)

(本誌・吉崎洋夫、亀井洋志)

週刊朝日  2018年11月23日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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