長野県泰阜村で「けもかわプロジェクト」代表を務める井野春香さんも、小さいころから動物好き。郷里の本の高校では畜産科で学んだ。島根大学生物資源科学部に進学した際、アルバイトが猟師へのきっかけとなった。駆除期間に猟師が捕ってきたシカを、山の解体現場で体重を量るなど手伝う仕事だ。

「おじいちゃん猟師たちが山を駆け回っていて、すごいなあと思った」

 井野さんが銃免許を取得したのは4年ほど前の20代半ば。数人の仲間とシカを中心にイノシシも捕る。肉を扱うところは多いが、誰も扱わない皮の活用から始めようと「けもかわプロジェクト」に取り組む。

 井野さんによると、最近は近隣でも女性が狩猟の世界へ入ってきており、ジビエへの興味や、狩猟を取り上げた本や漫画を見て関心を持った人たちだという。

 NPO「いのちの里京都村」事務局長の林利栄子さんは5年ほど前の20代半ばに銃免許を取得した。大阪で生命保険会社の営業をしていたが、仕事が合っていないと辞め、現在のNPOに転職。京都府内の地域物産を企業につなぐなど農村と都市部を結びつける仕事だ。地域のことを何も知らないまま仕事を始め、猟師なら週末に山に入れると勧められたのがきっかけ。猟期の毎週日曜は仲間とシカやイノシシを捕る。

 女性から見た猟師について、早大准教授の岩井さんは経験と知識の奥深さから「かっこいいなあ、すごいなあ」と話す。猟師はけもの道で足跡を見分け、交差点もわかるのは驚きで、いつも通る道、季節により一時的に通る道まで見分けるという。どこで水を飲むのか、植物や天候、地形などあらゆる知識がないと野生動物は捕れないと話す。

 岩井さん自身も狩猟者になった。夫が脱サラして千葉県鴨川市で農業を始めたが、イノシシが作物を全滅させた。岩井さんは駆除に立ち上がり、3年前に、わな免許を取得している。

 女性が狩猟を始める動機はさまざまだ。大日本猟友会の浅野能昭専務理事は女性狩猟者が増えている理由について、農作物被害に農家の女性や、社会的貢献として一般女性が立ち上がっているほか、ジビエブームで関心を持つ女性が増えていると指摘。男社会の猟友会に女性が入ると「高齢猟師がもう少しがんばろうと引退を撤回するなど活性化につながっている」という。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2018年11月16日号