表紙やトップの特集こそプロの結城アンナさんを使っているが、「私服を拝見」のコーナーに登場するのはすべて一般の大人女子だ。そして実は、このコーナーが一番人気が高い。

「体形が変わって、それまで似合ったものが似合わなくなり、おしゃれがわからなくなっている人がいっぱいいます。そんな人でも、ちょっと先を行くリアルな60代女子の着こなしを見れば、『こういうふうにすればいいんだ』と気づきます」

 若いころアンアンやノンノなどのファッション雑誌を愛読し、「ハマトラ」「ニュートラ」を着こなした世代だからもともと感度は高い。身近な「お手本」を見つけたら、取り入れるのはお手の物だ。

 そして、欲しくなったモノは貪欲に手に入れようとする。

「誌面に載っているモノについての問い合わせ電話がバンバンかかってきます。買いたくなったら、たまらなくなるのでしょう。今では商品のブランド情報はほぼ全部に入れるように努めています」

 大人女子たちのおしゃれはどんどんカジュアルになっているが、コーディネートの「お手本」が受けていることは、既成の商品やその組み合わせが「お手本」になっていないことを示唆している。

「とにかく、おばあちゃん服を着るのがいやだったんです」

 埼玉県の大山真沙子さん(65)は5年前、この思いがこうじて「起業」し、自分独自のブランドを立ち上げてしまった。

「ショップのお年寄りコーナーには行きたくない。でも、40代向けを売っている店にも入りづらかった。幸い、昔から大の洋服好きで、こういうデザインの服が着たいというイメージは自分の頭の中にありました。それなら自分で作っちゃおう、となったわけです」

 ブランド名は「Jazz」(ジャズ)、「上品でシンプル」がコンセプトだ。製造は業者に任せる「OEM」を利用しているため、生地を選びデザインをしっかり伝えることが肝になる。販売チャネルはネット通販。サイトでは自らがモデルになった写真でアピールする。全国にリピーターがいて、売れ行きは上々という。

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