ある日、「『いいんじゃない』だけじゃなくて、他になんかないのか?」と私が聞くと、Tは「……あんまりおもしろくねえな」とポテトチップを頬張りながらのたまった。プツン。「……てめえに言われたくねえよっ!」。ポカッ。「なんだ、言えっつったから言ったんだろ!」。ゴチンッ。ケンカの理由としては偏差値35。隣の部室の数学研究部に引き離され顧問の前に連れていかれ、「怪我すんなって言ったろさっ!」と叱られた。どこの訛りなんだ。顔に漫画のようなアザができ、落研なのに二人とも怪我をした。

 数日後。部室で使用を禁じられてた電気ポットを空焚きしてしまい発煙。学校中に火災報知機が鳴り響いた。我々は二人で近所の古本屋へエロ本を買いに行ってるところ、帰ったら黒山の人だかりだ。「迷惑かけんなっつたっさねっ!!(怒)」。先生は一体どこの生まれなんだ?

 翌日、顧問のところへ行き、私「部長、辞めます」顧「反省しろ!」私「今日からTが部長で」T「頑張ります!」このラリーを2年間で何回しただろう。ほとぼりが冷めたころ、また何かやらかして頭のすげ替え。

「今の世の中もそんないい加減な責任のとり方が溢れてるんじゃない?」なんてことが言いたいわけでなく、単なる思い出。秋深し。責任者でてこーい!

週刊朝日  2018年11月16日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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