「現在の最もスタンダードな方法では、肋骨(ろっこつ)あたりの第十胸椎から腰椎までを金属で固定するので、前かがみができません。日常生活では、靴下やズボンがはきにくくなったり、足の爪が切りにくくなったり、床に落ちているものを拾いにくくなったり、といった問題が起こります」(同)

 正座は問題ないが、イスに着席するときに姿勢が伸びたままになるので、初めは違和感がある。吉井さんもこんな経験をしている。

「特に両足がつながっているストッキングははきにくかったという記憶があります。とにかく足が上がらないんです」

 医師の許可が下りてから股関節を柔らかくするヨガや、ジムでの筋トレを始めたところ、日常生活ではほとんど支障がない状態にまで解消できたという。

 2011年に日本脊椎脊髄病学会が実施した全国脊椎手術調査によると、脊椎インストゥルメント手術の実施件数は約9500件で、ヘルニアや狭窄症などで行うすべての脊椎手術の約3割を占める。またその数は年々増えているという。

「意外と実施施設は多い。大人の脊椎の手術をしている施設で聞いてみるといいと思います」(種市さん)

 今年3月からは浜松医科大学や獨協医科大学が中心となって、データ登録が始まっている。この結果が出れば、安全性や有効性などの実態が把握できるという。

「手術による体への負担や、手術後のベネフィットなどを考えると、手術は腰の曲がりが始まるくらい、60代ぐらいの早期に受けることが望ましいと思います。大きく曲がってしまうと手術は大掛かりになり、入院も、術後のリハビリも長引いてしまいます」(同)

 本来なら腰が曲がる前に、しっかり背筋や腹筋を付けて腰を支えたり、バランス良く栄養をとって骨の強さを保ったりすることが大事だ。いつまでも心と体の健康を維持するためにも、背筋の伸びたしゃんとした姿勢を保ちたいものだ。(本誌・山内リカ)

※週刊朝日2018年11月9日号