「実は以前、中国で多く使っている新浪微博で、繁体字で書き込みをしたところ、中国の人から『愛ちゃんの心は中国にはなくて、台湾にあるのだ』とバッシングされたことがあります。それ以外にも逆のケースを含め、愛ちゃんを通じた中国と台湾のケンカのようなことが起こっていて、気の毒でした」

 愛ちゃんはこういったことを経験したからなのか、中国と台湾の自分のファンに対して、使い分けたのかもしれない。

 引退会見の時も自分のことより周囲に対するお詫びや感謝を口にしていた。

「私の周りにいる方々だったり、家族だったり、親戚だったり、私のせいというか、行動範囲が狭くなったりとか、周りの方にたくさん迷惑をかけてしまっていることが大きかったと思うので、その時はつらかったですけど、それ以上に、試合に勝った時はすごく喜んでくれたので、今は感謝の気持ちです」

 引退会見の最後で、愛ちゃんがハニカミながらこう話した。

「今日ここにいる皆様にひとことお話させてください。小さいころからお世話になりました」

 なんと愛ちゃんは会見に集まったマスコミに向けて挨拶をし始めた。子供の頃からマスコミと接していた愛ちゃんは「縄跳びとか自転車とかそういったものは全てメディアの方が教えてくれました」と感謝した後、「思春期の多感な時期にはすごく冷たい態度をとってしまった時もあったと思います。お許しください。これからも卓球界、スポーツ界、よろしくお願いします」と詫びたのだ。引退という晴れの日に愛ちゃんがマスコミに謝る必要なぞまったくないのだが…。

 こんな気遣い屋の愛ちゃんだったからこそ、日本だけでなく、中国や台湾でも愛されたのだろう。(本誌・大塚淳史)

※週刊朝日オンライン限定記事