大塚家具は、高級家具のイメージから脱却し、手頃な価格の商品を揃えることで、幅広い客層を取り込む戦略だったが、「中途半端に高い」イメージが先行してしまったという。

 その原因の一つは、競合他社の台頭だ。

 ニトリホールディングスは2018年8月中間期で売上高や最終利益が過去最高を更新。ニトリ関係者はこう言う。

「客層の違いや目指す方向性の違いでしょうが、競合の調査で大塚家具の名前はあまり上がりません。ニトリの経営システムは強固。価格はリーズナブルで、品質も年々改善されてきた。店舗数も増加、地域では独占状態です」

 在庫セールで、もう一つ懸念されるのが既存顧客の離反だ。

「今回のセールによって、大塚家具の高級なイメージはよりなくなってしまった。これまで定価で買っていた顧客は、今回のセールのことを良く思っていないでしょう。常客が激減する可能性もあります」 (東京商工リサーチ担当者)

 こうした懸念がありつつも、セールを実施したのは、いちはやく、「キャッシュ」が必要だったからという見方もある。

 大塚家具は、保有株式の一部を売却するなど、これまでも資金繰りを優先してきた。

「商品を売れば売るほど、仕入れも必要ですし、元々のキャッシュが少ないので、いずれ現金が足りなくなる可能性があります。今回のセールで、増えた手元のキャッシュをどう使っていくかが今後の命運をわけそうです」(前出の東京商工リサーチ担当)

 値引きセール中の利益は不透明だ。東京商工リサーチによると、セール前の2018年12月期第2四半期は営業赤字が35億600万円、四半期純損失も20億3700万円だった。2018年12月期通期の業績予想は営業赤字が51億円、当期純損失も34億2600万円と3期連続の赤字予想になっている。

 今後、民事再生など「閉店」の可能性はあるのか。様々な情報が飛び交っているが、大塚家具側は「具体的に決定した事実はございません。開示すべき事項が決定した場合には、速やかに公表いたします」と否定。在庫セール後の戦略で大塚家具の運命が決まるといっても過言ではない。大塚久美子社長の決断はいかに。(本誌/田中将介)

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