60代の女性スタッフと、毎週火曜日に近くの公園で待ち合わせ。2時間の利用で、最初の1時間は一緒に歩き、残りの1時間はベンチに座って会話を楽しむ。家族には話せないようなささいな愚痴も聞いてもらい、ストレス発散にもなっている。

 話し相手と趣味の活動の同行のサービスの価格は月8時間以上の利用で、1回2時間、7千円(税、交通費別)。スタッフの趣味や特技を生かして、カラオケや登山、ピアノの演奏などに対応している。

「趣味を通じて、元気を取り戻されるお客さまも多い」(ダスキン ライフケア荻窪ステーションの下平裕司マネージャー)

 老眼が進んで、細かい文字を読むのがつらくなったら、雑誌や新聞の音読サービスの利用もおススメ。常に新しい情報や知識に触れていれば、若々しい気持ちを保つことができる。その他には、囲碁や将棋の対戦相手などもある。

【雑務】
 握力が弱くなってビンのふた開けが難しい、高いところの電球交換は転倒が不安、目が見えづらくなって電池交換がしづらい……。日常生活のちょっとしたことでも困難に直面している高齢者も多いが、それも代行サービスが解決。かゆいところに手が届く業者も出てきているのだ。

 前出の「御用聞き」では、粗大ごみや家具の移動、庭の草むしりなど、力仕事になると5分300円からになっているが、ちょっとした作業なら5分100円でサービスを提供。同社の古市盛久代表取締役社長はこう語る。

「高齢の方は『ひとさまに迷惑をかけてはいけない』という価値観を持っている方が多く、困っていても抱え込んでしまう。高いところにある荷物や、重たい荷物などを移動したくても、そのまま放置してしまう人も少なくありません」

 これからの季節、高齢者を悩ますのは年賀状書き。手が震え、文字をきれいに書くのがつらくなってくる人も少なくないが、宛名書き代行サービスを活用するのもいい。例えば、江戸川区シルバー人材センター(東京都)では、相手の氏名と住所のみの場合、1枚120円(事務費別)から対応している。

 その他にも、町内会での草取りや見回り業務の代行や、犬の散歩を請け負う業者もある。

 シニアに無理は禁物。年齢とともに、できないことは増えてくる。でも、自分でできないことは、我慢したり諦めたりする前に、誰かに頼めばいい。充実した時間を過ごすために、代行サービスを活用してみてはどうだろうか。(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2018年10月26日号より抜粋

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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