人生100年時代を迎えた今、家事代行サービスに対するシニアのニーズが高まっている。比較サイト「カジフル」の責任者、本間陽介さんは言う。

「以前は共働き夫婦の利用がメインでしたが、今では高齢者が利用する例も珍しくありません。最近は『シニアプラン』といった高齢者を対象にした代行サービスも出てきています」

 これまで難なくこなしてきた家事が最近はおっくうに感じる、面倒になったというシニアは意外と多いのではないだろうか。家事は立ち仕事やかがむといった動作が多く、年齢とともに筋力や体力の低下でつらくなるのだ。無理をして転倒すれば、要介護度が一気に進んでしまうことも珍しくない。

 国立長寿医療研究センターの荒井秀典病院長はこう言う。

「個人差はありますが、後期高齢者の75歳を超えると生活の質に影響を及ぼすほどに体力が衰えてくる人が増え、80歳を超えるとその割合が多くなる。調査にもよりますが、筋肉量や身体機能が低下する『サルコペニア』とみられる方が80代のおよそ4人に1人いると考えられ、合併する病気によっては3人に1人の割合になると言われています」

 つまり、日常生活を送る上で“80歳の壁”があるといっていいだろう。若いときのように動き回ると、疲れてしまう。疲れないように動かないでいると、筋肉の量が減り、元気がなくなる。気持ちが沈めば、何もしたくなくなり、さらに動かなくなる。荒井病院長によると、こうした悪循環に陥らないようにするのが今のシニアの課題だという。

 体力をつける筋トレもいいだろう。しかし、できることは自分でやり、できないことは無理せず他人に任せてしまうのも、賢い“壁”の乗り越え方だ。「代行」サービスを上手に利用するのも一つの方法なのだ。

 ただ、気になるのは、その料金。「お手伝いさん」を想像して高額なイメージを抱くかもしれないが、最近はお手頃価格で、5分100円、1時間1500円からといったものもある。(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2018年10月26日号より抜粋

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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