収入・支出が出ると両者の差が「1年間に不足するお金」になり、それに老後の期間をかけ、さらに住宅のリフォーム費用や海外旅行など生活費以外のイベント費用を足せば「老後に必要なお金」の全体がわかる仕掛けだ。

 野尻所長が言う。

「積み上げ型も悪くはないのですが、ブレが大きくなると思うんです。例えば30歳、40歳の人に、『老後になった時の生活を思い浮かべてほしい』と言っても簡単ではありませんよね。第一、『海外旅行1回で100万円』とか『住宅リフォームに500万円』といったふうに、『定額』で考える時代ではないと思うのです。一億総中流の時代は皆が同じ生活レベルだったから定額でもよかったが、所得格差・生活格差がこれだけ大きくなった今の時代に、そのパターンが当てはまるとはとても思えません」

(本誌・首藤由之)

週刊朝日  2018年10月26日号より抜粋

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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