瀬戸内海に浮かぶクルーズ船の食泊施設「ガンツウ」の一室。一休の予約での人気宿の一つだ (c)朝日新聞社
瀬戸内海に浮かぶクルーズ船の食泊施設「ガンツウ」の一室。一休の予約での人気宿の一つだ (c)朝日新聞社
2017年に完成した「ガンツウ」の進水式の様子 (c)朝日新聞社
2017年に完成した「ガンツウ」の進水式の様子 (c)朝日新聞社
国内宿泊市場について説明する一休の榊淳社長(撮影/中川透)
国内宿泊市場について説明する一休の榊淳社長(撮影/中川透)

 宿泊予約サイト運営会社「一休」の榊淳(さかき・じゅん)社長は、近年の共働き世帯増加で新たな国内旅行需要が生まれていると指摘する。高級宿予約サイトの同社。1泊10万円もの高級旅館は、富裕層だけでなく普通の共働き夫婦も予約するなど、旅行市場に変化があるとみる。

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 共働き世帯は2017年に約1200万世帯で、専業主婦の約640万世帯の1・9倍。10年は共働きが約1千万世帯で、専業主婦の約800万世帯の1・3倍だった。人手不足もあって、女性の就業率は近年急上昇。旅行市場にも変化が生まれてきている。

 榊社長はこう語る。

「共働き夫婦が、二人で休みを合わせてハワイに行くのは難しい。それでも、月1回ぐらいは非日常的な生活を送りたい。そこで、月1回10万円の宿に泊まりたい、そんな人たちが増えていると強く感じる」

 訪日外国人客に沸く国内観光業界だが、日本人の宿泊需要は頭打ち傾向だ。観光白書によると、国内のホテル・旅館での外国人の宿泊は17年に延べ7800万人泊で、前年比12・4%も増えた。一方で、日本人は前年比0・7%減の延べ4億2千万人泊。ボリュームは大きいものの、近年は頭打ち傾向にある。

 一休は、日本人宿泊市場のなかで取り扱いシェアを伸ばし、成長してきた。榊社長は、国内宿泊の二極化が進んでいると指摘する。

「宿泊施設はビジネスホテルが増える一方で、旅館が減っている。日本人が日本の宿泊施設に泊まる数はずっと横ばい傾向。そこで、我々が感じるのは、特徴があって1泊の料金が非常に高い旅館が、ものすごく増えていること。こうした市場が少しずつ形成されている」

 同社サイトでの人気旅館(東日本)は、トップが神奈川・箱根の「強羅花壇」。次いで、静岡の「熱海ふふ」、静岡・伊東の「アバ リゾート イズ 坐漁荘(ざぎょそう)」だった。いずれも1泊5万~10万円ほどの高級旅館。リゾートホテル(西日本)では、三重・志摩の「アマネム」が人気1位だった。

 一休は宿泊予約に加え、06年からはレストラン予約も展開する。近年はパソコンでなくスマホ経由の利用が増え、レストランサイトの訪問は8割がスマホ経由。実際の予約も6~7割がスマホ経由になった。宿泊予約はレストランより利用者の年齢層がやや高く、スマホ経由の比率はそれぞれ1割ほど下がるという。

 一休は月1回ほど、サイト利用者に集まってもらい、食事などをしながら顧客のニーズを聞いている。

 榊社長は「ポイント還元などのニーズもあるが、顧客が求めていることは実は、ちょっとした特別な扱い。空室があれば部屋のアップグレードや、チェックアウトを1時間遅らせてもらうなど、特別感のあるちょっとしたサービスを求める顧客が多い」と話す。(本誌・中川透)

※週刊朝日オンライン限定記事