昨年1年で単発も含め11本ものドラマに出演した。出演時間が短い役であっても、いつも必ず強い印象を残すが、役について、監督に相談することはまずない。台本を読んで、自分が感じたことをやってみるだけだ。「恋のしずく」の瀬木直貴監督は、それを“憑依型”と表現している。

アイドル時代は、振り付けや歌を覚えることに苦手意識がありました。でも、AKBに所属しながら、一人でお芝居に挑戦したとき、それまでの人生で芽生えたことのなかった感情が生まれたんです。最初は何をどうしたらいいかわからなくて、監督さんにも『全然できてないよ!』と注意されたんですが、“嫌だな、恥ずかしいな”という気持ちのほかに、“悔しい”って気持ちも湧いてきた。“もっとうまくなりたい!”っていう向上心が沸々と(笑)。で、気づいたんです。“私、お芝居が好きなんだ”って。長く夢中になれるものにやっと出会えた感じでした」

 静かで涼やかな雰囲気の奥に、何か底知れないエネルギーが潜む。

「とにかくたくさんのお芝居に出て、30歳になるまでに、自分の経験した感情すべてを注ぎ込めるような代表作に出会えたら」と彼女は願う。純粋さや美しさ以外にも、人間の持つどろっとした部分や、途方もない悲しみ、怒りなど、様々な感情を表現できる、そんな女優になることを。(取材・文/菊地陽子)

週刊朝日  2018年10月26日号