前川喜平さん。本連載では読者からの前川さんへの質問や相談を受け付けています。テーマは自由で年齢、性別などは問いません。気軽にご相談ください。
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写真はイメージです (c)Gettyimages
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 文部科学省で事務次官を務めた前川喜平氏が、読者からの質問に答える連載「“針路”相談室」。今回はインスタグラムのフォロワーを増やすために買い物にのめり込んでいるという30歳の女性からの相談です。

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Q:物欲が止まらなくて悩んでいます。インスタグラムで最近買ったものや、コーディネートの投稿を続けるうち、買い物にいっそうのめり込んでいます。

 フォロワーが多い人は、最新のファッションに身を包み、トレンドのものをいち早く手に入れています。インスタグラムの世界では、フォロワー数に比例して、企業やブランドが商品をプレゼントしてくれたり、特別なイベントに招待してくれたりもします。私はフォロワーが200人を超えましたが、その数は人気の証しでもあるので、「もっと増やさなくては」と強く思うようになりました。

 だから、「フォロワーを増やすための投資」と考えて、以前よりかなり服にお金を使っています。買っては投稿し、誰かに褒めてもらってうれしくなり、また新しいものを買っては投稿する、を繰り返しています。また、他の人の投稿を見ると、毎日欲しいものができます。

 気づけば、インスタグラムを開くたびに物欲を刺激され、買っても買っても気持ちが追いつきません。出費がかさんで金銭的にピンチです。自分でもバカバカしくなる瞬間もあるのですが、このループから抜け出せないでいます。(東京都・30歳・女性・契約社員)

A:僕は、「これが欲しい」という欲望があることは良いことだと思います。欲望は人生の生きがいであり、生きる意思そのものです。ただ、あなたの場合、執着しすぎていることが問題なのです。「服が好き」「服が欲しい」という気持ちは捨てなくていいけれど、執着はしない。これが欲望とうまく付き合うコツだと思います。

 あなたが何に執着しているのか考えてみましょう。あなたの執着心は、服が欲しいという以上に、いろんな人からちやほやされたいという願望が強いのではないでしょうか。人に褒められたいという気持ち自体は、悪いものではないと思います。しかし、それで自分は本当の幸せを手にしているのか、見つめ直してみることが必要でしょう。

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前川喜平

前川喜平

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

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