澄川恵美子執行役員はその狙いについて「生産性を高める取り組みの一環。一分一秒でも多く集中し、成果を上げられる環境づくりに取り組んでいる」と語る。

 このいすを愛用する上津原清子さん(24)は、肩や首のこりに悩んできたが、最近は、姿勢が良くなり、こりも緩和したという。

「今では集中スペースからこのいすを持ち出して、自分の机でも使っています。座ると、自然と良い姿勢を意識できる。集中が切れにくくなったと感じます」(上津原さん)

 同製品を販売しているトレイン(東京都渋谷区)によると、通常のいすでは8時間のうち集中しているのは2時間だったところが、このいすを使用すると、40分増加。同じ業務をした場合でも、9%作業時間が短縮されたという。

「働き方改革の一環として導入する企業が増えている。学校や塾での導入も進んでいます」(広報担当者)

 こうしたいすを個人で取り入れる動きも珍しくはない。都内の会社に勤めるウェブデザイナーの菅家郁美さん(32)は「ボディメイクシート Style」を購入した。このいすは、太もも~おしり~腰を包み込むような形をしたシートで、腰を正しく支え、座ったときの姿勢を整えるという。普段使っているいすの上にのせて、使用できる。

 菅家さんはそれまで、腰痛などに苦しみ、整骨院に通っていた。施術を受けた日は姿勢が良くできても、その姿勢を維持できず。毎日、良い姿勢を意識するために、購入した。値段も8千円台と手ごろな価格だ。

「最初はとても窮屈な感じでしたが、数日使用するうちに逆に心地よく感じるようになった。このいすを使う前は、座っているのが苦しく、姿勢を変えたりしていましたが、今は姿勢を気にせず、仕事ができる」(菅家さん)

 この取材を始めて2週間、記者も姿勢を意識してきたが、仕事の効率も上がったような気がする。この記事も集中して書き上げられた。これを機会にあなたも姿勢を見直してはどうだろうか。(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2018年10月19日号

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら