「自分はプロに行きます、先輩はアマチュアで頑張ってください」という言葉は有名だ。輪島はかつて筆者に田中理事長について次のように語っていた。

相撲をクビになって、プロレスに行って、そこからも引退。テレビなどでメシを食っていたが、うまくいかなかった時、田中先輩が助けてくれた。キューバの相撲の監督だとかを紹介してくれたり、助かった。田中先輩は『もし自分もプロに入ったら輪島より強かった。あいつは横綱になれなかった』とネタにしているようだが、絶対に俺の方が強かったよ。そこだけは、今も田中先輩には譲れないぞ」

 こう話すと立ち上がり、相撲の立ち合いの恰好をし、おどけていた輪島さん。

 先の後援者によれば、角界を離れても相撲への情熱はかわらず、最近でも、テレビで相撲中継は欠かさず、チェックしていたという。

「咽頭がんで声を失うまでは電話でよく白鵬の取り口だとかをよく解説してくれました。相撲への熱い想いを感じました」

 合掌。(今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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