「血圧が200を超えるような人が漢方で治したいと受診してきても、処方はしません。西洋薬の降圧剤のような切れ味は漢方にはないので、まず西洋医学の医師の診療を受けてもらいます」

 と小田口医師。新見医師は言う。

「漢方の位置づけは西洋薬と食事の中間くらい。ものすごい効果が期待できるわけではないが、重篤な副作用もほとんどありません。気楽に飲めばいいのです」

 西洋薬は臨床試験で安全性や効果を確認したうえで厚労省から承認され、保険収載される。ところが漢方薬は保険収載されているものの、臨床試験は経ていない。先人の長い使用経験から「効果があって安全」と判断された薬なのだ。

 なお漢方薬は、品目は限られるものの、医師の診療を受けずに薬局で購入することもできる。OTC医薬品と呼ばれ、ほとんどは医師が処方する医療用漢方よりも成分量が少なめだが、医療用と同じ満量処方のものもある。新見医師は言う。

「OTC医薬品で自分に合う処方を見つけるのも一つの方法です。漢方薬はまずいイメージがありますが、自分に合う漢方薬はおいしく感じることが多いようです。2カ月くらい飲んでみて、合うと感じたら続ければいいし、効果がなさそうならほかの処方を試してみればいい。迷ったときは薬剤師に相談しましょう」

 ただし漢方薬は薬である以上、副作用がゼロではない。麻黄を含む処方は長期間飲んでいると血圧が上昇することがある。附子は大量の汗をかくことがあり、大黄(だいおう)は下痢をしやすい。

「何か変だと感じたときはすぐに服用をやめること。これはOTC医薬品だけでなく医療用漢方にも共通する鉄則です。そうすれば大きな問題になることはありません」(新見医師)

 また自覚症状のないまま副作用が進行するケースもある。たとえば黄ごんという生薬は、血液検査をして初めて肝機能障害に気づくことも。飲んでも良くならないときは、副作用や病気を見逃さないように受診することが大事だ。小田口医師は言う。

「バランスの取れた食事や適度な運動を心掛ければ、死ぬ直前まで穏やかに健やかに過ごすこともできるかもしれません。しかし慌ただしくストレスも多い現代社会で実行するのは難しく、心身のバランスを崩しがちです。調整能力に優れた漢方を上手に活用しましょう」

(ライター・谷わこ)

(※)北里大学東洋医学総合研究所(同研究所は遠方や多忙な患者向けに一部パソコンによる遠隔診療を取り入れている)

週刊朝日  2018年10月12日号より抜粋