男性はかつて「連続不審死事件」で疑惑の女を取材し、未発表となった原稿を「もう使わないから」と女性ライターに渡してしまう。何か魂胆があるように思えるが、底意が見えてこない。

 この男性については、過去に貴重な取材ノートを託された自身の体験がもとになっている。

「それもお二人もいた。見ればどれだけ苦労して取材されたかわかるもので、『形になるんだったら』と預けてくださったことには、感謝しかありません」

 ハードボイルド小説の探偵を思わせるキャラクターに「つまり、昭和生まれの男なんですよ」と篠田さんは言葉を足した。

「女性に理解があって、フェミニストっぽい人物として書くと、男が嘘っぽくなる。女性たちと対立しながらも信頼関係を築いていく。いろんな方から読後の感想を聞いて、そういう人間関係は書けたなと思っています」

(朝山実)

週刊朝日  2018年10月12日号