希林さんが、最後に遠藤さんの店に立ち寄ったのは、亡くなる2カ月前のこと。遠藤さんはちょうど不在だった。いつも遠藤さんが店にいない時には、すぐに帰っていたのに、その日は珍しく、店の従業員と1時間半も話し込んだ。「照れるから」と、別れ際は振り返らず、さっと去るのがお決まりだったが、その日はなぜか、振り返って手を振ったという。
「その1カ月後、希林さんと電話で話したのが最後でした。珍しく“これからも頑張ってね”“ありがとうね”なんて言葉が飛び出して、ちょっと嫌な予感がしていたんです」(同)
娘の内田也哉子さんからの電話で、希林さんの訃報を知ったのは、その電話から1カ月後のことだった。
「体のあるうちに、会ってあげてほしい」
そう也哉子さんから言われ、飛んで行った。
「本当に綺麗な死に顔で、まるで寝ているように安らかなお顔でした」(同)
30日に行われる本葬儀で、遠藤さんは希林さんに最期の別れを告げる。
「希林さんは、映画を撮り終える時、心の中で“ありがとう”と唱えるのが決まりなんだって、話してました。映画『万引き家族』(是枝裕和監督)のラストシーンの中で、海辺にいる希林さんが口パクで何か言うシーンがあるでしょ。あれも、映画に“ありがとう”って話してたんだそうです。内緒だって言われてたんけど、希林さん、もう言っていいよね?」
常に感謝の気持ちで、作品と向き合ってきた希林さんは、作品を通して多くのものを人々に届けてくれた。日本中が、「ありがとう」の思いで、最期を見守っている。(本誌・松岡かすみ)
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