動きを足しただけで、他は変えてないですよ(笑)。散り椿の前でのシーンなんですが、前日に本物の散り椿の木を見たら、思ったより高さがあったので、しゃがんで打ち合うのもありかなと思い、まずは大作さんに「変えていいですか?」と聞きました。もちろん当日に言うのは失礼なことなんですが、西島さんなら受け止めてくださるだろうと思っての提案でした。実際、すべて受け止めてくださいました。

──クライマックスで、奥田瑛二さん演じる扇野藩の家老と対決するシーンも、印象的でした。

 あの場面は大作さんに「必殺技がほしい」と言われて、考えました。相手が奥田さんなので、リアクションを引き出したほうが絶対に面白いと思って、あのかたちになりました。

──ここ数年、制作面にも深く関わる作品が増えていますね。

 もともと自分で入り込もうとしていたわけではなくて、今回も大作さんから「なんかいいのないか」と聞かれて、「こういうのがありますよ」って答えているうちに、殺陣を考えるようになったんです。ただ、「信頼されたい」という思いはありました。たとえば馬に乗れるか乗れないかで、時代劇のスタッフの反応が変わったりするんですよ。それだけ時間をかけて勉強してきたということを認めてくださる。もちろん、技術だけが芝居ではないけれど、現場で信頼を得られるというのは大きいです。

──深く関わることは、面白さと大変さの両方があるのでは?

 中途半端ではダメですね。「岡田が勝手なこと言ってる」と思われてしまう。専門職の方から「あの人の話なら聞こう」と思ってもらえるくらいの知識と経験がないと、周りの役者さんたちも納得してはくれません。

──先ほどの「厳しさのなかに美しさがある」という言葉、岡田さん自身の姿勢と重なります。

 「柔術では勝てないけど、総合格闘技で勝てればそれでいい」みたいな考え方ってあるじゃないですか。僕はたとえ専門外であっても、柔術家と柔術でいい戦いができるところまで自分を高めていきたいんです。「自分は専門家じゃないから」「こっちだったら勝てるのに」と言うのではなく、専門じゃない領域でも認めてもらえるように努力したい。自分の枠を作らず、「まだまだこれは伸びるな」という場所を、自分のなかに探していたいんです。今いる場所におさまっていたくない。20年以上仕事してきて、そういう思いはあります。

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