【文豪の湯宿】不倫問題で心中の1カ月前 有島武郎が心癒やした温泉場 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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【文豪の湯宿】不倫問題で心中の1カ月前 有島武郎が心癒やした温泉場

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鈴木裕也週刊朝日
ゆとうや旅館
元禄元年創業。表門や土蔵など6カ所が国の有形文化財/兵庫県豊岡市城崎町湯島373

ゆとうや旅館
元禄元年創業。表門や土蔵など6カ所が国の有形文化財/兵庫県豊岡市城崎町湯島373

執筆の合間に心身を休めた「青雲」の湯。内湯だが開放感あふれる窓の外の景色を「いいようもなく美しい」と評した

執筆の合間に心身を休めた「青雲」の湯。内湯だが開放感あふれる窓の外の景色を「いいようもなく美しい」と評した

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる連載「文豪の湯宿」。今回は「有島武郎」の「ゆとうや旅館」(兵庫県・城崎温泉)だ。

【文豪が「いいようもなく美しい」と評した湯の写真はこちら】

*  *  *
 大正12年4月末、有島武郎は山陰4都市を回る講演旅行を終え、城崎(きのさき)温泉に立ち寄る。老舗・ゆとうや旅館に戯曲の執筆のために3泊した。

「今原稿用紙を買わせにやって、これから又仕事にかかろうというところ。境地からいうと落付いて書けそうだ」(5月1日、足助素一宛書簡)

「ここで二日間働きましたが、十五、六枚しか書けませんでした。(略)ここの温泉場と玄武洞は見ものです」(5月3日、秋田雨雀宛書簡)

 近隣の温泉寺を参詣したり観光名所を訪れたりと、旅の魅力が執筆への意欲を上回ってしまったようだ。

 温泉を満喫して帰京した有島を待っていたのは女性問題だった。女性にモテた有島は7年前に妻と死別してからも、休み茶屋の女や寿司屋の娘と関係を持ち、女優や代議士夫人ともそつなく交際していた。しかし、前年秋から恋仲だった人妻の「婦人公論」記者・波多野秋子は別だった。

 一度は関係を終わらせたが、6月に入って関係が再燃。それが露見すると2人は遁走、6月9日に軽井沢の別荘で心中した。45歳だった。1カ月前の城崎滞在中には想定もしていなかった最期だったろう。(文/本誌・鈴木裕也)

■ゆとうや旅館(ゆとうやりょかん)
兵庫県豊岡市城崎町湯島373

週刊朝日  2018年10月5日号


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