成年後見制度の説明を受ける女性 (c)朝日新聞社
成年後見制度の説明を受ける女性 (c)朝日新聞社
認知症になる前・なってから考える、お金の管理の3つの制度 (週刊朝日2018年10月5日号から)
認知症になる前・なってから考える、お金の管理の3つの制度 (週刊朝日2018年10月5日号から)

 65歳以上の7人に1人がなる認知症。なったときに、自分の財産がどうなるかを考えたことはあるだろうか。判断能力が衰えて意思を示せなくなると、預貯金は塩漬けに。お金をおろすハードルが上がり、自分も家族も困る。認知機能が衰えたときのお金“認知症マネー”への対処法を考えたい。

【認知症になる前・なってから考える、お金の管理の3つの制度】

 成年後見(法定後見)は最も強力な対策だが、使い勝手に課題も多い。では、ほかにどんな手立てをとればよいのだろうか。

 成年後見制度に詳しい遠藤英嗣弁護士は「これからは法定後見よりも、後見人をあらかじめ選んでおく任意後見を中心に考えていくべきではないか」と指摘する。

 任意後見は、認知症になった際に本人の意思であらかじめ選んだ後見人に財産管理を任せる制度。取引額を一定範囲に制限したり、不動産を除いて預金に絞ったり、本人の意思を柔軟に反映できる利点がある。

 遠藤弁護士によると、任意後見人は株式売買などの金融商品取引について、本人から具体的に委任されれば、高リスクの商品をより安全な有価証券や定期預金にも変えられる。一方で、たとえ儲けを得られそうでも、リスクの高いものへの切り替えはできないという。

 司法書士でつくる「成年後見センター・リーガルサポート」の西川浩之理事も「まず任意後見制度の利用を考え、まとまった財産があれば信託制度を利用してもらう」と話す。

 家族信託と呼ばれ、財産管理のあり方を家族で話し合い、委ねる制度だ。「家族の家族による家族のための信託」とも呼ばれる。本人のためだけに管理する成年後見と違い、配偶者や子などのためにもお金を有効に使える。

 認知能力があるうちに信頼できる人と信託契約を結び、財産名義を移す。大半の財産を移す人が多い。認知症で後見人を選ぶ事態になっても信託財産は凍結を免れ、管理を任された受託者が家族のために使える。

 よいことずくめに聞こえるが、家族の意思疎通のよさが前提になる。だれを受託者に、どの範囲を信託財産に、などについて家族間の合意が必要なためだ。本人の遺産から除かれる財産となるため、相続を事前に話し合う一面も出てくる。

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